ナカヤマン。

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ナカヤマン。

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ナカヤマン。(YAMAN NKYMN)
生誕 日本の旗 日本京都府京都市
国籍 日本の旗 日本
職業 marketing strategist/contemporary artist

ナカヤマン。1974年 - )は、京都とロサンゼルスを拠点とするmarketing strategist/contemporary artist。京都府京都市出身。海外では『YAMAN NKYMN』名義で活動する。[1]

神戸大学で化学を学んだ後、マーケティングストラテジストとしてのキャリアをスタートさせ、ルイ・ヴィトンシャネルグッチなど世界的に有名なファッション・ハウスをパートナーにグローバルに活躍。ストラテジックディレクターとしてアニメ映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』(2021)の興行収入100億円達成に関わった。

ナカヤマン。は急速に変化するソーシャル・ビヘイビアに適応し、アルゴリズムを駆使したコミュニケーション分析とデータ解析を活用、2012年にはエンターテインメント性やインタラクティブ性、ゲーム性に対応したコンテンツの制作へと移行した。以来「Information transmission and its (ingrained) distortion/ 情報伝達とその(沈着した)歪曲」を中核テーマに、今も尚そのプロセスを加速させている。[2]

化学の原理に基づき、ナカヤマン。の実践は、物質と社会の両方に作用する共通の法則(不可視な状態、関係性、相互作用、初期状態と平衡状態)を並置観察、並列類推することを特徴とする再コード化である。この並置視点からナカヤマン。は社会の不均衡を見抜き、マイノリティや「他者」に対する歪曲定義、その因子である情報伝達に焦点を向ける。[2]

2021年2月、京都の国宝 飛雲閣での個展で本格的に現代アーティストとしての活動を開始。2022年2月に国際的なアートフェアFrieze Week Los Angelesの公式プログラムに招致され、初展示から僅か一年でグローバルデビューを果たした。[3]

2023年11月、大徳寺 芳春院で展示『(跡見:)追儺 黒節分/ (ATOMI:)WHITE2BLACK』を開催。茶事を引用したリレーショナル・アート作品を発表し、漫画家の荒木飛呂彦、現代アーティストのシアスター・ゲイツ、楽焼家元の十六代 樂吉左衞門などが参加した[1]。翌2024年8月には六本木 森美術館のコラボレーションに参加。同年2024年11月、ニューヨークのHOTEL (THE MERCER)で海外での初個展『(跡見:)黒節分/ (Atomi:)WHITE2BLACK∈division』を開催した。[4]

作品リスト

“POLYPTYCH - NOEL 2012” commissioned by CHANEL (2012)

“POLYPTYCH - NOEL 2013” commissioned by CHANEL (2013)

“GU TimeLine” commissioned by FAST RETAILING CO., LTD. (2014)

“POLYPTYCH - COCO SHOOT” commissioned by CHANEL (2015)

“From New York to Tokyo” commissioned by GUCCI (2015)

“LAST PHOTOBOOTH - LOUIS VUITTON x Jake & Dinos Chapman” commissioned by LOUIS VUITTON (2017)

“TAMBOUR HORIZON” commissioned by LOUIS VUITTON (2017)

“THE ARCADE” commissioned by COACH (2018)

“陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL” (2021)

“陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL (1.0: 1.0, 1.0, 1.0, 1.0) 1.0” (2022)

“THE ULTIMATE OTHER” produced by Frieze Studios (2022)[3]

“年ごとに 人はやらへど目に見えぬ 心の鬼はゆく方もなし WHITE2BLACK 11072023” (2023)

“Beauty and Generosity between us, not division/ 私たちの間にあるのは分断ではなく、美と寛容である” produced by 茶美会, in collaboration with Theaster Gates (2024)[5]

“年ごとに 人はやらへど目に見えぬ 心の鬼はゆく方もなし WHITE2BLACK 11062024” (2024)[6]

作品

陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL

陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL (1.0: 1.0, 1.0, 1.0, 1.0) 1.0

年ごとに 人はやらへど目に見えぬ 心の鬼はゆく方もなし WHITE2BLACK 11072023

2023年10月31日から11月8日、京都は大徳寺 芳春院で発表された茶事を引用したリレーショナルアート作品。茶事『追儺 黒節分/WHITE2BLACK』が10月31日、11月4日、11月7日の各日3人の完全招待制で、展示『跡見:追儺 黒節分/Atomi:WHITE2BLACK』が跡見の茶事を引用する形式で11月3日、5日、8日の各日27人限定の完全予約制で実施された。各茶事の正客は、現代アーティストのシアスター・ゲイツ、漫画家の荒木飛呂彦、楽焼家元の十六代・樂吉左衞門が務めた。

コンセプトは「情報伝達とその(沈着した)歪曲」。「歪曲」を善悪両義で扱い、情報として伝達した時点で何かしらの歪曲を含むことを前提としている。数百年も経てば歪曲は沈着し、何が事実か分からなくなる。また500年、1000年、あるいは2000年前の情報が現存しているということは、「史実」と「正史」の差分、つまり時の勝者、権力者、体制=マジョリティの意志が介在している可能性がある。これに相応しい題材として450年の歴史を持つ「千利休の茶」が扱われた。

千利休にリンクするものとして「おに」「菅原道真」「鉄腕アトム」が引用され、その全てが「まつろわぬもの」という共通項で示された。また海外の構造言語を持つ触媒として1999年のアメリカ映画「アメリカン・ビューティー」が、アメリカ人なりの侘び寂びを見いだす物語、主人公が解脱した瞬間に死を迎える物語として、千利休と重ねつつ引用された。

待合では(UN)KEEPALLで用いられた2m超の「おに」の仏像彫刻が展示され、その後、アニメ鉄腕アトムの展示がある薄茶席へと続いた。作家は「1960年代の鉄腕アトムはただの勧善懲悪の物語ではない。ロボットは人間と同等の感情を持つ設定である反面、ロボット三原則という法の下、人間と平等に競うことも争うことも許されていない。アトムが差別を受けることも、「まつろわぬもの」を演じる物語も少なくない」と説く。以降も作家の展示に登場する鉄腕アトムのセル画と子供のご飯茶碗が初めて使用された。

年ごとに 人はやらへど目に見えぬ 心の鬼はゆく方もなし WHITE2BLACK 11062024 [6]

2024年11月6日から9日、ニューヨークのマーサホテルで発表された茶事を引用したリレーショナルアート作品。茶事『黒節分/WHITE2BLACK∈division』が11月6から8日の各日3人の完全招待制で、展示『跡見:黒節分/Atomi:WHITE2BLACK∈division』が跡見の茶事を引用する形式で11月9日単日、81名限定の完全予約制で実施された。

コンセプトは引き続き「情報伝達とその(沈着した)歪曲」。茶の湯文化とアニメ文化を並置観測する形で企画された本作は、文化の栄枯盛衰における、主観的美意識から客観的美意識への転換に焦点をあてることで、ひとつの問題を提起している。

「千利休の主観的美意識によって成熟し、利休百年忌を境に”利休ならどう考えたか”を問う客観的美意識に転換した茶の湯文化。社会から切り離され成長した主観的美学が、1989年の宮﨑勤事件により決定的に社会から分断。その状況を打破すべく、大人でも楽しめるアニメ”新世紀エヴァンゲリオン”が生まれ、以降グローバル・ニッチマス・コンテンツとして客観転換したのがアニメ文化」こう見立てた作家は「現代における客観的美意識としての茶の湯文化とアニメ文化は、履修可能な”型”にすぎないのでは」と問う。

文化における主観的美学の価値を探求すべく、神道イズムを用いてテーゼされた本作では、茶事(懐石料理と薄茶、濃茶を含む3.5時間の席)の形式を持ちいて、失われた主観的美意識の擬似体験が提供された。触媒性のある引用として1999年のアメリカ映画「アメリカン・ビューティー」や1960年代の白黒アニメ「鉄腕アトム」のほか、90年代のアニメ「美少女戦士セーラームーンS」や「新世紀エヴァンゲリオン」、ファッションカルチャーからマルタン・マルジェラの1990年春夏コレクションなど、リレーショナルアートが活発だった時代の文化要素が用いられた。

関連作品

THE ULTIMATE OTHER [3]

2022年5月5日にFrieze.comで公開された、ナカヤマン。の作品『陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL (1.0: 1.0, 1.0, 1.0, 1.0) 1.0』の制作過程を追ったFrieze Studios制作の短編映画[3]

ナカヤマン。の他、ハリウッドで活躍する女優の岡本多緒、コレクションモデルのフェルナンダ・リー、LAのギャラリストのキブン・キム、西本願寺の執行長である武田昭英が出演する本作は、コロナ禍に米国で興った反アジアン・ヘイトの文脈で、(UN)KEEPALLとそのテーマであるマイノリティ・イシューを掘り下げている[3]

コロナ・パンデミックの中、ナカヤマン。が日本の民間伝承における「おに」の意味に「疫病そのもの」と「疫病を退けるもの」の両義が存在することに注目し、「おに」を人間に歪曲され都合よく利用される弱者の定義と重ねるところから物語を展開。グローバル・パンデミックによって炙り出された「マイノリティに課せられた矛盾」こそがアジアン・ヘイトであると指摘する。アジア系アメリカ人のマイノリティ性と、モデル・マイノリティとして扱われるスケープゴート性の対比はまさに「おに」と重なっていく。

ナカヤマン。は自身の作品を、物質ではなく儀式と表現している。慶派の仏像彫刻、国宝 飛雲閣、タイトルに用いられた平安時代の歌人の和歌は、その儀式を本物にする為に必要な要素であると語る。またクエンティン・タランティーノの映画『キル・ビル』を「西洋の視点でアジア文化を描いたもの」として捉える一方で、タランティーノのオタクとしての愛が、差別性の回避に貢献している可能性を示唆する。岡本多緒は差別が愛と恐怖の天秤が恐怖に傾いたものだと定義し、キブン・キムとフェルナンダ・リーはアメリカ社会におけるアジア人とその文化の存在価値、マジョリティがその構造をも取り込もうとする視点を語る。

Beauty and Generosity between us, not division/ 私たちの間にあるのは分断ではなく、美と寛容である [5]

2024年8月6日、森美術館『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』の特設会場で発表。ナカヤマン。がクリエイティブディレクターを務める『茶美会』とシアスター・ゲイツのコラボレーションで、シアスター・ゲイツ、茶美会主宰の伊住禮次朗、ナカヤマン。の3名が亭主を務める茶事の形式を用いたリレーショナルアート作品。

本企画は2023年11月に大徳寺 芳春院で実施した『(跡見:)追儺 黒節分/ (Atomi:)WHITE2BLACK』を切っ掛けに実現し、ナカヤマン。は本作品の企画パートを担当。全体は『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』の展示構成と作品を流用したもので、茶事の流儀に即して「待合」「献茶」「迎付」「懐石」「茶席」の順に体験を提供した。迎付では、亭主の一人であるシアスター・ゲイツが展示の特徴の一つであるDJセットを用いて客をもてなした。

最後の体験である茶席では「分断」を「美」と「寛容」に変換するというコンセプトのもと、亭主3名、客9名の合計12名が互いの為に茶を立て合う趣向で、亭主と客の境界線の消失が目指された。

エキシビション

2021

“陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL” - Hiunkaku, Nishi Hongwanji temple, Kyoto

2022

Frieze Week Los Angeles - Rooftop in Downtown LA, Los Angeles, USA

2023

“(跡見:)追儺 黒節分/ (Atomi:)WHITE2BLACK” - Houshunin, Daitokuji temple, Kyoto

2024

“(跡見:)黒節分/ (Atomi:)WHITE2BLACK∈division” - HOTEL (THE MERCER), New York, USA